先に結論
岡山県は「安く住めるが、稼ぎと人の流れでは負けている県」という形をしています。 住居費の安さ(全国46位=2番目に安い)と交通・通信費の安さ(全国47位=全国で最も低い)ははっきりした強みで、 合計特殊出生率1.27も全国平均1.15を上回っています。
一方で、人口は2020年から4.2%減り(全国は2.5%減)、2025年は5,594人の転出超過でした。 1人当たり県民所得は公表42県中30位です。「住みやすさの数字」と「稼ぎ・人口の数字」の向きが逆になっているのが、 岡山の特徴です。
主要指標の一覧
数字はすべて出典ページで確認したものだけを載せています。順位の母数が47ではないものは、その旨を書いています。
| 指標 | 岡山県 | 全国など | 順位 | 年次 |
|---|---|---|---|---|
| 総人口 | 1,808,664人 | 全国 123,049,524人 | 47都道府県中20位 | 2025年10月1日 |
| 人口増減率 | -4.2% | 全国 -2.5% | 奈良県・広島県・大分県も同じ-4.2% | 2020→2025年 |
| 転入超過数 | -5,594人 | 転入超過は7都府県のみ | 47都道府県中39位 | 2025年 |
| 1人当たり県民所得 | 3,034千円 | 東京都 6,368千円 | 公表42県中30位 | 2023年度 |
| 物価水準(総合) | 97.7 | 全国平均 100.0 | 47都道府県中38位 | 2024年 |
| 物価水準(住居) | 82.0 | 全国平均 100.0 | 47都道府県中46位 | 2024年 |
| 物価水準(交通・通信) | 97.4 | 全国平均 100.0 | 47都道府県中47位 | 2024年 |
| 物価水準(光熱・水道) | 104.1 | 全国平均 100.0 | 47都道府県中18位 | 2024年 |
| 合計特殊出生率 | 1.27 | 全国 1.15 | 47都道府県中20位 | 2024年 |
| 出生率(人口千対) | 6.1 | 全国 5.7 | 47都道府県中9位 | 2024年 |
| 民間企業設備投資額 | 1兆5,718億円 | 県内総生産の19.0% | 公表42県中15位 | 2023年度 |
| 工場立地件数 | 7件 | 岐阜県 72件/愛知県 55件 | 出典に順位の記載なし | 2025年 |
| 有効求人倍率 | 1.31倍 | 全国 1.18倍 | 47都道府県中19位 | 2026年3月 |
| 年降水量(岡山地点) | 1,143.1mm | 最少は長野 965.1mm | 代表47地点中2位 | 1991〜2020年平均 |
| 年間日照時間(岡山地点) | 2,033.7時間 | 最長は甲府 2,225.8時間 | 代表47地点中15位 | 1991〜2020年平均 |
全31指標は同梱の okayama-key-indicators.csv に、 気象官署47地点の平年値は jma-normals-47.csv に入れています。 どちらも1行ごとに出典URLと取得日を付けています。
強みと言える数字
住居費が全国で2番目に安い。 2024年の消費者物価地域差指数で、岡山県の「住居」は82.0でした(全国平均=100)。 47都道府県のうち46位で、これより低いのは岐阜県(81.3)だけです。 東京都は127.2、神奈川県は112.9なので、住居費だけを比べると東京の3分の2以下の水準になります。
交通・通信費は全国で最も安い。 同じ調査の「交通・通信」は97.4で、47都道府県中47位(=全国で最も低い)でした。 出典資料は、10大費目のうち交通・通信の都道府県間比率を「東京都÷岡山県」で1.06倍と説明しており、 岡山県が全国の下限として名指しされています。
出生に関わる数字は全国平均より上。 2024年の合計特殊出生率は1.27で、全国の1.15を上回り47都道府県中20位。 人口千人当たりの出生率も6.1で、全国の5.7を上回る全国9位でした。 ただし合計特殊出生率は前年(2023年)の1.32から下がっており、全国と同じく低下傾向にあります。 なお婚姻率(人口千対)は3.8で順位は全国12位ですが、全国の4.0は下回っています。
設備投資は経済規模のわりに厚い。 2023年度の県内総生産(支出側・名目)は8兆2,600億円で公表42県中22位ですが、 そのうち民間企業設備投資が1兆5,718億円あり、県内総生産に対する比率は19.0%で公表42県中15位でした。 東京都は13.8%、大阪府は16.2%なので、大都市圏より設備投資の比重が高い構造です。
雨が少ない。 気象庁の平年値(1991〜2020年)で、岡山地点の年降水量は1,143.1mmでした。 各都道府県の代表的な気象官署47地点の中で、長野(965.1mm)に次いで2番目に少ない値です。
弱みと言える数字
人口の減り方は全国平均より速い。 2025年国勢調査の速報値で岡山県の人口は1,808,664人。2020年から79,768人減り、増減率は-4.2%と公表されています。 全国の減少率は2.5%なので、岡山県はそれより速く減っています。 -4.2%は奈良県・広島県・大分県と同じ値です。なお統計局は、2020年の人口を2025年の市区町村の区域に組み替えて計算しているため、公表されている人口から増減率を計算しても一致しないことがあると注記しています。人口が増えたのは東京都(+1.4%)と沖縄県(+0.1%)の2都県だけでした。
人が出ていく側にいる。 2025年の住民基本台帳人口移動報告では、岡山県は転入27,712人・転出33,306人で、5,594人の転出超過。 前年の5,583人からわずかに拡大しました。47都道府県中39位で、転入超過だったのは 東京都・神奈川県・埼玉県・大阪府・千葉県・福岡県・滋賀県の7都府県だけです。 中国地方では広島県が9,921人の転出超過で全国最多でした。
所得は中位から下、しかも年による振れが大きい。 2023年度の1人当たり県民所得は3,034千円で、この年に数字が公表された42県のうち30位。 前年度(2022年度)は2,635千円で42県中39位、その前年(2021年度)は2,847千円で28位でした。 前年度比は2022年度が-7.5%、2023年度が+15.1%と大きく振れており、単年の順位だけで岡山の所得水準は語れません。
光熱・水道は全国平均より高い。 2024年の消費者物価地域差指数で、岡山県の「光熱・水道」は104.1(47都道府県中18位)でした。 住居と交通・通信が安い一方で、この費目は全国平均を上回っています。食料も100.7(17位)で全国平均をわずかに超えます。 「岡山は何でも安い」わけではありません。
工場の新規立地は少ない。 2025年の工場立地動向調査で、岡山県の立地件数は7件・立地面積5haでした。 2024年は9件・9haです。同じ2025年に岐阜県は72件、愛知県は55件、兵庫県は51件、茨城県は49件を記録しています。 ただしこの調査は、その年に1,000㎡以上の用地を取得した事業者が対象で、集計率は70.3%です。単年の件数は振れやすい点に注意してください。
「晴れの国」は数字で裏づくのか
結論から言うと、「雨が少ない」は裏づきますが、「日照時間が長い」は言い切れません。 気象庁の平年値(1991〜2020年)を各都道府県の代表的な気象官署47地点で並べると、岡山地点の年降水量1,143.1mmは 少ない方から2番目でした。一方、年間日照時間2,033.7時間は15位で、1位の甲府(2,225.8時間)とは約190時間の差があります。 香川県の高松は2,046.5時間、広島は2,033.1時間で、ほぼ同水準です。
さらに、この数字は岡山市にある観測地点1点の値であり、県全体を代表しません。 同じ岡山県でも県北の津山地点は、年降水量1,416.0mm、年間日照時間1,779.0時間、年降雪量の合計44cm、最深積雪15cmです。 岡山地点は年降雪量の合計も最深積雪も1cmですから、雪については県内で大きな差があります。 「晴れの国」を県全域の話として使うと、県北の実際とはずれます。
分かったこと
- 岡山県の物価の安さは「住居」と「交通・通信」に強く偏っている。住居82.0(46位)、交通・通信97.4(47位)に対し、光熱・水道は104.1(18位)で全国平均超え。総合では97.7(38位)にとどまる。
- 県庁所在市どうしで比べると、岡山市の総合指数は97.7で、調査対象52市中49位。家賃を除く総合は98.0で50位だった。
- 合計特殊出生率1.27は全国平均1.15を上回るが、中国地方では鳥取県・島根県(ともに1.43)、山口県(1.36)より低く、広島県(1.29)とほぼ並ぶ。
- 1人当たり県民所得の順位は3年で28位→39位→30位(いずれも公表42県中)と動いており、順位の上下だけを取り上げると誤解を招く。
- 人口は減っているが世帯数は増えている。2020年から人口は4.2%減、世帯数は0.6%増で、1世帯当たり人員は2.36人から2.24人になった(全国は2.26人→2.15人)。
- 有効求人倍率(就業地別・季節調整値、2026年3月)は1.31倍で全国1.18倍を上回るが、中国地方では島根県1.60倍、山口県1.51倍のほうが高い。
調べきれなかったこと
- 県別の「投資額」を直接示す統計は見つからなかった。工場立地動向調査は立地件数と敷地面積だけで、投資金額の項目がない。そのため設備投資は県民経済計算の民間企業設備(総固定資本形成の内訳)で代用した。企業誘致の補助実績や個別案件の投資額は、このページでは扱っていない。
- 県民経済計算の2023年度は5県(石川・奈良・徳島・香川・宮崎)が未公表で、47都道府県の順位が出せない。このページの所得・投資の順位はすべて「公表42県中」の順位で、全国順位ではない。
- 2025年国勢調査は速報集計のため、年齢別・産業別の内訳がまだ出ていない。高齢化率や生産年齢人口の比較はできなかった。
- 気象データは1県1地点しか比較していない。また、埼玉県は熊谷、滋賀県は彦根、山口県は下関の観測値を使っている(気象台の所在地が県庁所在市ではないため)。県内の地域差は岡山県について津山地点を追加しただけで、他県は確認していない。
- 住宅の広さ・持ち家率・通勤時間・地価は今回調べていない。住居費の安さの中身(家賃なのか持ち家取得費なのか)までは分解できていない。
- 有効求人倍率は令和8年3月の単月値。都道府県別の年度平均は、参照した公表資料には載っていなかった。