いちばん大きな抜け
岡山市の防災マニュアルには、日本語版と多言語版があります。この 2 つの更新が離れています。
| 版 | 最終更新 | 言語 | 警戒レベルの記載 | 避難勧告(現在は避難指示に一本化) |
|---|---|---|---|---|
| 詳細版 第7版 | 令和7年9月作成 | 日本語のみ | あり | — |
| 多言語版 第2版 | 平成29年4月更新 | 英語・中国語・韓国語 | 0 件 | 1 件 残る |
多言語版 PDF(24 ページ、ファイルの作成日は 2017-05-02)の本文を全文検索したところ、 「警戒レベル」「避難指示」「高齢者等避難」はいずれも 0 件で、 「避難勧告」が 1 件残っていました。 日本語版のほうには「警戒レベル4 避難指示」「警戒レベル3 高齢者等避難」「警戒レベル5 緊急安全確保」が 表として載っています。
「避難勧告」は、いま使われていない言い方です。内閣府「避難情報に関するガイドライン」 (令和3年5月・令和4年9月更新)の 6 ページに、災害対策基本法を改正して 「警戒レベル4の避難勧告と避難指示については『避難指示』に一本化し、これまでの避難勧告のタイミングで 避難指示を発令することとする」「警戒レベル5を『緊急安全確保』とし」と書かれています。 https://www.bousai.go.jp/oukyu/hinanjouhou/r3_hinanjouhou_guideline/pdf/hinan_guideline.pdf
つまり、日本語で読める人と英語・中国語・韓国語で読む人とで、 避難のときに使われる言葉そのものが違う状態になっています。
言語ごとに揃っているもの、揃っていないもの
同じ「岡山市の防災情報」でも、経路によって読める言語の数が違います。 数字は日本語を含まない外国語の数です。
| 情報の経路 | 発信元 | 外国語 | やさしい日本語 | ベトナム語 |
|---|---|---|---|---|
| 気象警報・注意報(岡山県) | 気象庁 | 14 | — | あり |
| 岡山市防災メール | 岡山市 | 12 | — | あり |
| 市サイトのHTML(自動翻訳) | 岡山市 | 14 | — | あり |
| 多言語動画「災害への対応について」 | 岡山市 | 4 | あり | あり |
| 防災マニュアル(多言語版) | 岡山市 | 3 | — | — |
| 緊急のための多言語ガイド(119番) | 岡山市消防局 | 3 | — | — |
| WEB版ハザードマップ | 岡山市 | 0 | — | — |
| 緊急速報メール(エリアメール) | 岡山市ほか | 記載なし | — | — |
分かったこと
- 気象庁の側はよく揃っている。多言語防災気象情報ポータルは日本語を含め 15 言語。 警報・注意報のページの HTML に prefecture_okayama の選択肢があり、 岡山県を選べることを確認しました。予報・台風・津波・地震・火山も同じ 15 言語です。
- 気象庁は用語の対訳を JSON で公開している。 https://www.data.jma.go.jp/multi/data/dictionary/{言語}.json が 15 言語ぶん存在し、 すべて取得できました(英語版はキー数 431)。 「警戒レベル4相当」「高齢者等避難」「危険な場所から全員避難」などの公式訳がここに入っています。 新しく訳す前に、まずここから引くべきです。
- ただし「避難指示」「緊急安全確保」はこの辞書に無い。 日本語版の辞書を全文検索して 0 件でした。市町村が発令する情報なので気象庁の対象外です。 「線状降水帯」「記録的短時間大雨情報」も 0 件でした。この 4 語は別に訳語を決める必要があります。
- 岡山市サイトの言語切替は自動翻訳。 js/2024_toolbox.js の execTrans() が 外部の自動翻訳サービスの URL へ遷移する実装でした。14 言語に対応しますが、 添付 PDF は翻訳されません。防災マニュアルもハザードマップもチラシも PDF です。
- WEB版ハザードマップには言語切替が無い。 トップページの HTML は 5,803 バイトで、English / Language / 中文 / 한국어 / lang いずれの文字列も 含まれていませんでした。市サイト共通のヘッダとは別の作りになっています。
- 「外国人向け防災対策について」のページに、市独自の情報が無い。 本文は自治体国際化協会(CLAIR)と観光庁の Safety tips への外部リンク 2 本だけでした。
- 119番通報の多言語ガイドは画像 PDF。 2 ページ、ファイル作成日 2024-02-26。テキスト抽出を試したところ 2 バイトしか取れませんでした。 画面読み上げも、ブラウザの翻訳も、ページ内検索も効きません。
- ベトナム語だけ、資料によって有無が分かれる。 防災メール(12言語)と多言語動画(5言語)にはありますが、防災マニュアル多言語版(3言語)にはありません。 令和2年国勢調査では、岡山市の外国人人口 11,844 人のうちベトナムが 3,082 人(26.0%)で 中国 3,659 人(30.9%)に次ぐ 2 位です。
- やさしい日本語は「言語メニュー」に入っていない。 多言語動画とくらしの便利帳にはやさしい日本語版がありますが、 サイトヘッダの Language メニュー(14 言語)には選択肢としてありません。
翻訳の優先順位
命に関わる順に並べました。同梱の CSV に 13 件ぶん、出典 URL と流用できる既訳つきで入れてあります。
| 優先 | 翻訳するもの | 理由 | 流用できる既訳 |
|---|---|---|---|
| A1 | 警戒レベル1-5と避難情報の対応表 | 多言語版が旧制度の用語のまま | 気象庁対訳辞書(15言語) |
| A2 | 防災マニュアル多言語版の全面改訂 | 日本語版と8年半の開き | 現行第2版の24ページ分 |
| A3 | 避難場所6分類の違い | 災害種別で開設場所が違う | 気象庁対訳辞書の災害種別語 |
| A4 | 緊急速報メールの読み方カード | 端末には日本語で届く | 気象庁対訳辞書の一部 |
| A5 | WEB版ハザードマップの操作導線 | 言語切替そのものが無い | なし |
| B1 | 防災メールの登録手順 | 配信は12言語だが入口が日本語 | 既存の案内PDF |
| B2 | 119番・110番の通報の言い方 | 画像PDFで読み上げが効かない | 現行PDFの3言語の文面 |
調べきれなかったこと
- 国土交通省「川の防災情報」の多言語対応。 https://www.river.go.jp/kawabou/ は HTTP 200 でしたが、 返ってくるのは JavaScript で描画するための骨組みだけで、HTML 内の言語指定は lang=ja のみでした。https://www.river.go.jp/en/ も HTTP 200 ですが、返る HTML は日本語版と同じ骨組みです。 なお https://www.river.go.jp/(末尾スラッシュのみ)も表示できます。 実際の画面での言語切替の有無は、ブラウザで開かないと判断できません。
- ハザードマップポータルサイトの多言語対応。 https://disaportal.gsi.go.jp/ は HTTP 200 で取得できましたが、 HTML 内に English / 多言語 / 中文 / 한국어 / lang= のいずれの文字列もありませんでした。 index_en.html と /en/ はどちらも HTTP 404 です。 言語切替を見つけられなかった、というところまでです。「無い」と断定はできていません。
- Safety tips アプリの対応言語の案内が、ページによって違います。 提供元の観光庁のページには「対応言語は15言語です」と書かれています。 岡山県国際交流協会のページには11言語とあり、案内している数が食い違っています。 アプリ本体は確認していません。
- 直近の外国人住民数。 使ったのは令和2年国勢調査(令和2年10月1日現在)の数字です。 それ以降の住民基本台帳ベースの人数と国籍内訳は確認できていません。 言語の優先順位を決めるときは、最新の統計で確認してください。
- 既存の多言語 PDF の訳文の質。 対応言語の数と、日本語原文との用語のずれは確認しましたが、 各言語の訳文が自然かどうかは母語話者でないと判断できません。
- 岡山県国際交流協会の防災ガイドブック(5言語)の中身。 協会ページの記載から言語構成は確認しましたが、冊子本体は開いていません。 「避難指示」「緊急安全確保」の訳語が既にあるかもしれません。着手前に確認する価値があります。
- 避難場所の種別ごとの一覧ページ(洪水・土砂・地震・津波・津波避難ビル・福祉避難所)の中身。 カテゴリに 6 分類があることは確認しましたが、各ページは開いていません。
同梱ファイル
- okayama-disaster-multilingual-status.csv — 情報項目 25 件の対応言語一覧(確認した根拠つき)
- translation-priority-list.csv — 翻訳対象 13 件の優先度つきリスト
- translation-policy.md — 翻訳方針の案(用語の典拠・言語の優先順位・更新の運用)