使い方
「一覧」で13品目の指定区分・指定年・所在地・主な製品を確認できます。「技法」で各品目の作り方の特徴を、 「現状・後継者」で数字つきの現状データが確認できた品目(備前焼・勝山竹細工・郷原漆器)をまとめています。 公式一覧に入っていない産地(井原市の藍染め)と、確認できなかった項目は末尾にまとめました。
岡山県内の伝統的工芸品 一覧(13品目・国指定2+県指定11)
| 品目 | 指定区分 | 指定年月日 | 所在地 | 主な製品 |
|---|---|---|---|---|
| 備前焼 | 国指定 | 1982-11-01 | 岡山市・備前市・瀬戸内市ほか | 日常雑器・茶陶器・壺・甕 |
| 勝山竹細工 | 国指定 | 1979-08-03 | 真庭市勝山地域 | かご・ざる・盛り籠・花器 |
| 郷原漆器 | 県指定 | 1992-11-16 | 真庭市川上地域(蒜山) | 椀類などの食器 |
| 虫明焼 | 県指定 | 1988-04-08 | 瀬戸内市邑久町 | 茶器・花器 |
| 烏城紬 | 県指定 | 1988-04-08 | 岡山市 | 着物・巾着・ネクタイ |
| 備中和紙 | 県指定 | 1982-03-01 | 倉敷市 | 清川内紙・備中鳥の子・備中宇陀紙ほか |
| 倉敷はりこ | 県指定 | 1981-01-30 | 倉敷市 | 張り子の虎・十二支 |
| 津山箔合紙 | 県指定 | 1981-01-30 | 津山市 | 金箔・銀箔を挟む箔合紙 |
| 手織作州絣 | 県指定 | 1981-01-30 | 津山市 | 木綿絣織物 |
| 撫川うちわ | 県指定 | 1982-03-01 | 岡山市 | お多福型のうちわ |
| がま細工 | 県指定 | 1982-09-10 | 真庭市蒜山地域 | 手提げかご・雪靴 |
| 高田硯 | 県指定 | 1982-09-10 | 真庭市勝山地域 | 硯 |
| 津山ねり天神 | 県指定 | 1988-04-08 | 津山市 | 天神人形 |
出典: 岡山県伝統的工芸品 - 岡山県ホームページ(マーケティング推進室)、 および各品目の個別ページ(備前焼・ 勝山竹細工・ 郷原漆器・ 虫明焼・ 烏城紬・ 備中和紙・ 倉敷はりこ・ 津山箔合紙・ 手織作州絣・ 撫川うちわ・ がま細工・ 高田硯・ 津山ねり天神(すべて2026-09-09取得)
技法(品目ごと)
備前焼
釉薬を使わず、松割木で長時間焼きしめる技法。成形はろくろ成形・たたら成形・押型成形・手ひねり成形。 炎や灰の当たり方で胡麻・桟切り・牡丹餅・緋襷・青備前・伏せ焼などの「窯変」模様が生まれる。 原材料は地元産のヒヨセ粘土・長船黒土・山土など。
勝山竹細工
晒しや皮むきをしない青竹を使い、「こしらえ」「編み」「縁仕上げ」の3工程で作る。輪造りと「ござ目編み」による編みが特徴で、使い込むほどにあめ色に変化する。
郷原漆器
栗材(ヤマグリ)を輪切りにし、生木のまま年輪の中心を一気にろくろ挽きして木地を作る技法が特徴 (他の漆器産地には見られない手法)。全工程が手作業で、拭漆技法により木目を活かして仕上げる。
虫明焼
成形はろくろ・たたき成形・たたら成形など。素地に化粧掛けや彫りで模様をつけ、手描きの下絵付けを施す。 釉薬は長石釉・藁灰釉など。本焼きは1280度で40〜48時間かけて焼成する。
烏城紬
緯糸を撚らず、束ねて絡める「からみ」という独自の技法が特徴。かすり糸は手くくりで染色し、生糸のみを使用する。
備中和紙
「流し漉き」による手漉き和紙。簀は萱・紗・竹製、ねりにはトロロアオイを使用。コウゾを原料とする 「清川内紙」、ガンビを用い寒中に漉く「備中鳥の子」(仮名書道小字用)など、原料により趣の異なる種類がある。
その他7品目
倉敷はりこ(張り合わせ・彩色を手作業、和紙と泥絵具を使用)、津山箔合紙(ミツマタを原料とした流し漉き、 金箔・銀箔工芸の箔合紙)、手織作州絣(先染めの手織り、「くくり」で染めたかすり糸を使用)、 撫川うちわ(「すかし」「歌つぎ」技法、64本以上の骨)、がま細工(がまとヤマカゲの皮ひもを三つ組み・ 四つ組みで編む)、高田硯(勝山町産の黒色粘板岩をのみで手彫り)、津山ねり天神(津山市産粘土に和紙を 混ぜ、型からはずしたあと窯で焼かずに天日で乾かす)。詳細は下記出典を参照してください。
現状・後継者について確認できたこと
数字を伴う後継者状況が確認できたのは以下の3品目です。なお撫川うちわ(撫川うちわ保存会 三杉堂)と手織作州絣(作州絣保存会)については、岡山県公式ページに保存会が技術の伝承と後継者育成に取り組んでいる旨の記載があります(人数の記載はありません)。
備前焼
岡山県立美術館が2020年1〜3月に実施した調査(調査票発送494件、回答155件)では、 「後継者がいない」と答えた割合が58%(1997年の前回調査では23%)に増加。「後継者がいる」は 22%(前回33%)、「わからない」は19%(前回43%)でした。回答者の年齢構成は40代28%・70代24%・ 60代17%で、前回(40代29%・50代26%・60代20%)と比べ50代の減少が目立ちます。
出典: 日本経済新聞「備前焼『後継者いない』が2倍に 23年ぶり調査」(2026-09-09取得)
備前市は「備前焼製作技術継承者育成支援補助金」を実施しています。対象は義務教育修了者で市内に 住所を有し、認定技術保持者から月10日以上・1日3時間以上の指導を受け、将来3年以上市内に居住して 備前焼製作に従事する意思がある者など。補助対象経費は市内住宅の賃貸料(月額上限45,000円)と 実習に直接必要な材料費で、補助額は必要経費×4/5(年間上限200万円、補助対象期間3年間)。 年度予算の範囲内での運用で、実績報告の期限は3月15日です。
出典: 備前市「備前焼製作技術継承者育成支援」(2026-09-09取得)
業界団体として協同組合岡山県備前焼陶友会があり、体験プログラムの提供、公式通販サイトの運営、 毎年10月の「備前焼まつり」開催などを行っています。会員数など詳細な現状データはサイト内には 見当たりませんでした。出典: 協同組合岡山県備前焼陶友会(2026-09-09取得)
勝山竹細工
職人の高齢化と後継者不足により、1959年結成の勝山竹工協同組合は1997年に解散しました(約40年間活動)。 組合解散後も創作活動は続いており、現代的なかご等の容器や雑貨も作られています。組合解散後の職人数・生産規模についての公開データは確認できませんでした。
出典: 中国経済連合会「勝山竹細工」(2026-09-09取得)
郷原漆器
一度途絶えかけた技術ですが、昭和60年(1985年)頃から調査研究が始まり、平成元年(1989年)7月から 地元有志による復活の取り組みが始まりました。現在の後継者の人数・年齢構成についての記載は見当たりませんでした。
出典: 岡山県ホームページ(郷原漆器)(2026-09-09取得)
分かったこと
- 岡山県内の伝統的工芸品は計13品目。うち備前焼・勝山竹細工の2品目が経済産業大臣の指定、 残り11品目が岡山県の「郷土伝統的工芸品」の指定。
- 技法の詳細(成形方法・原材料・工程)は13品目すべて岡山県公式ページで確認できた。
- 数字つきの後継者データが確認できたのは備前焼のみ。後継者「いない」が1997年23%→2020年58%へと 大きく増えており、備前市が家賃・材料費を補助する育成支援制度を用意している。
- 勝山竹細工は職人の高齢化・後継者不足を理由に、1997年に業界団体(協同組合)が解散している。 伝統自体は個人の活動として継続している。
- 「勾玉」は上記13品目に含まれておらず、岡山県内に勾玉を伝統的工芸品として 生産する産地があるという情報も確認できなかった。
- 「藍染」も単独の指定品目ではない。井原市や倉敷市児島地区の藍染め・デニムの歴史が、 井原・児島のデニム産業の土台になったという歴史的経緯は複数の公開資料で確認できた。
調べきれなかったこと
- 倉敷はりこ・津山箔合紙・がま細工・高田硯・津山ねり天神の5品目について、現在の担い手数・年齢構成・後継者の有無を示す公開データは、岡山県公式ページおよび一般検索では見つからなかった。撫川うちわ・手織作州絣は保存会の活動が公式ページに記載されているが、人数の記載はない。
- 虫明焼・烏城紬・備中和紙は、技術保持者や保存会による継承活動があることは確認できたが、 後継者数・育成中の人数など定量的な現状データは確認できなかった。
- 井原市・倉敷市児島地区の藍染めについて、現在稼働している染色工房の数や後継者の状況を示す 公開データは見つからなかった。
- 岡山県内に「勾玉」を伝統的工芸品として生産する産地があるかどうかは、今回参照した資料の範囲では 確認できなかった。